2023/08/06

2023年4月リリースレビュー

 

2023年4月のリリースを振り返ります。


Worriers / Warm Blanket
Country: New York, US
Label: Earnest Jenning Record
The Measure[SA]時代からを考えるとベテランの域に到達するPunkバンドです。
前作からは熱量がだいぶ抑えめになっていて、従来のWorriersに比べるとかなり大人しい作品になっています。
2作立て続けにこういうスタンスに切り替えたということは、もうこういう方向性でやっていくのかなというのを予感させますね。アー写もVo.のLaurenだけになっているので、もうバンドというよりもソロプロジェクトに近いのかも。
ちなみに9月にもアルバム出すそうです。制作スピード半端ないヨ。


Rise Of The Northstar / Showdown
Country: Paris, FR
Label: Atomic Fire Records
日本大好きサイヤスタイル。
とにかく日本の不良、アニメからの影響が色濃く出ていてMVにもわざわざ日本語字幕を毎回付けてくれて本当に愛を感じますね。
東日本大震災が起きた時は、チャリティソングをリリースしてくれていたしガチで日本の事大好きなバンドなんですよ。ここまで露骨に愛されてると、素直に嬉しいですありがとうROTNという気持ち。
ステージ衣装は全員特攻服で、近年は特殊なマスクを着用しています。これ下手したらダサいになりかねないんだけど、俺はめちゃくちゃ好き。普通にかっけぇ。
兼ねてからBeatdownに由来する曲が多かったけれど、今作では2000年代初頭のNu-Metalを彷彿とするアレンジが多くSlipknotとかP.O.D.を思い出しました。
気志團万博に呼ばれねぇかなー。


Scowl / Psychic Dance Routine
Country: California, US
Label: Flatspot Records
2021年にアルバムをリリースしてからノリに乗っているHxCバンド。
これはもうWar On Women好きな人には間違いないと思うんだよね。
あえてFemale fronted HxCというところで言うなら、今シーンでトップクラスに注目度が高いバンドだと思います。
レーベルは前作同様Flatspotから。


Frenzal Rhomb / The Cup Of Pestilence
Country: Sydney, AU
Label: Fat Wreck Chords
90年代から活動しているベテラン高速Punkバンド。
BelvedereやSatanic Surfersからテクニカルな部分を削ぎ落して、シンプルながらも疾走感ある曲が多くキャッチーで聴きやすいです。
Secondshotとか好きな人には良いかもしれない。自分は直近の3作品を聴いたのですが、キャッチーに振り切っていると思いきや、シャウトを織り交ぜた曲があったりするのでけっこうアグレッシブな印象を受けます。


Covet / Catharsis
Country: California, US
Label: Triple Crown Records
元祖タッピング女子とかいうカテゴライズを勝手にしたくなるくらい有名なYvette Young率いるインストバンド。
貼った曲はアルバムの1曲目なんですが、これがめちゃくちゃ良い曲でなかなか聴き進めていく事ができないくらいリピートしてました。
元々Math Rock寄りのインストっていうスタイルでアルバムをリリースしていましたが、「あれ!歌が入ってる!」という衝撃から始まり、Covetの世界観の中にShoegazerをぶち込んでこんなに上手く料理してくれるなんて、これはもうセンス以外の何ものでもないなぁと感服です。
ラストを飾る"Lovespell"っていう曲も、アルペジオがリフレインするところとかめちゃくちゃかっこいいし、何よりライブでも音源と同じクオリティ保ってるのが本物。
リズム隊のメンバー変わっちゃったみたいだけど、Audiotreeのライブ映像マジ良い。


NF / Hope
Country: Michigan, US
Label: Capitol Records
アルバムを聴いたのは初めてでした。
Eminemから大きな影響を受けているようで、堅実でリリカルなフロウはKendrick LamarやLogicも彷彿とします。
ダークな雰囲気を帯びながらもEmo Rapとは一線を引いたビートも印象に残ります。
Eminemの登場以来、彼から影響を受けたと公言するラッパーが数多く居て、それが人種や肌の色を超えていることを考えるとEminemの功績ってハンパないですね。
NF見た時になぜかManafestを思い出しちゃった。


Balance And Composure / Too Quick To Forgive
Country: Pennsylvania, US
Label: Memory Music
うぉぉなんとBalance And Composureが電撃復活!
2曲しか収録されていなかったけどめちゃくちゃ嬉しいです。
BACといえば、2010年代初頭のモダンPop Punk/Emoがムーブメントとなっていた頃に頭角を現したバンドです。
当初はEmoの繊細さを帯びながらも、轟音Alt-Rockテイスト強めの曲なんかが多く後年になるとElectronicaも取り入れた前衛的なサウンドへと変わっていきました。
個人的には2ndアルバム"The Things We Think We're Missing"が大優勝で、毎度1曲目の"Parachutes"でテンションぶち上げ。
まだ聴いたことない人は是非聴いてみて欲しい。マジでくっそかっこいいので。
そんな彼らの復活作は1st~2ndを経由したタイトなナンバーに仕上がっていて、2月末にリリースされたWebbed WingのEPと同じ質感をしていました。今のWill Yepの好みが思いっきり反映されてるって感じがします。特にドラムのミックス。
これはアルバム期待しちゃって良いっすか??


Jesus Piece / ...So Unknown
Country: Pennsylvania, US
Label: Century Media
Vein.fmとかCode OrangeのようなハイブリットなMetalcoreです。
このシーンは本当にミレニアム世代に回帰してるサウンドっていうのがもろにわかります。
Nu-MetalとかHeavy Rockを現代にアップデートして解釈した曲っていうんでしょうか。
Metal寄りのサウンドではあるものの、根底にはHxC的なアプローチがあったりするのでライブではTerrorと共演してるし、MalevolenveやKnocked LooseといったMetal寄りなバンドとも親和性が良いみたいです。


Squid Pisser / My Tadpole Legion
Country: California, US
Label: Three One G
Noise/HxCの覆面集団。
今作はゲスト参加型となっていて、PunchのMeganやTera MelosのJohn Clardyといった面々が各楽曲にクレジットされています。
とりわけMeganに関しては、こんなにレイジングでバーサーカーになっている彼女を久々に聴いたのでPunchファンとしても嬉しかったなぁ。Punch解散後に活動していたSuper UnisonではもっとPost-Hardcore寄りなアプローチになっていたからね。
3月のリリースレビューで登場したThe HIRS Collectiveが好きな人はチェックしてみると良さそうです。


Yung Bleu / Love Scars II
Country: Alabama, US
Label: Moon Boy University
自分が昨年絶賛したYung Bleuのニューアルバム。
哀愁を帯びたビートに儚く乗っかるボーカル。Hip HopよりもR&B寄りですが、昨今のEmo Rapに通ずるものがあるのでYoung Thugとか好きな人にはオススメかなと思います。
今作も泣きのパートが多め。


Portrayal Of Guilt / Devil Music
Country: Texas, US
Label: Run For Cover Records
5月の来日も記憶に新しいPortrayal Of Guiltのニューアルバム。
今作は前半5曲がバンド演奏、後半5曲がオーケストラアレンジで構成されています。
従来のカオスで先が読めないアレンジは控えめになっていて、ストレートな曲調になっています。
実質新曲は5曲というオチなんだけど、アレンジを変えて収録する手法は頭良いよね。
それこそJeff Rosenstockみたいに既出のアルバムをSkaアレンジで全曲リメイクするっていうのもそうだし、こういう試みは個人的に大好き。


Enter Shikari / A Kiss For The Whole World
Country: Hertfordshire, UK
Label: SO Recordings
なんやかんやで良い曲多いのが憎たらしい。
初めて知ったのがSpace Shower TVの「今月の洋楽おすすめ」みたいなやつで、毎回"Sorry You're Not A Winner"が流れてました。高校に進学して洋楽よりも日本のPunk/HxCが好きだった友人ですら、この曲のモッシュパートはテンション上がる言うてたんで相当よな。
当時はRave meets Metalという触れ込みで売り出していたけれど、作を追うごとに凶暴的なスクリームやグロウルっていうのは少なくなってMetal<Loud Rockな感じになっていきました。
その中でキャッチ―な曲も多く作られるようになって、より聴きやすさが増していった感じ。この変遷ってある意味で同郷のBring Me The Horizonにも通ずるものがあるなって思います。キャッチ―は正義なんですよ、どのジャンルにおいても。


Superviolet / Infinite Spring
Country: Ohio, US
Label: Lame-O Records
The Sidekicks解散というニュースが流れた時は多くのIndie/Punkリスナーが悲しい気持ちになったと思いますが、その時に「各々バンドはやっていくよ」という発言を残していました。そんなThe SidekicksのフロントマンであったSteve Ciolekのソロプロジェクトが、このSupervioletです。
Dr.にはThe Sidekickでも叩いていたMatt Climerが参加。プロデュースはSaintsenecaというグループのZac Littleが行いました。実はZacはThe Sidekicksの"Awkward Breeds"のジャケットを手掛けた人物でもあって、割とThe Sidekicksと縁のある布陣で制作されていることがわかります。
曲調はThe Sidekicks時代の延長線上にあるEmo/Indie/Folkな感じです。


Iann Dior / Leave Me Where You Found Me
Country: Texas, US
Label: 10k Projects
一応Emo Rapという括りではあるけど、もはやRapとは何なんだろうかという考えに行きついてしまう。Pop Punkとは、Emoとは何ぞや。そういった感覚に近い。
して、Iann Diorもキャッチーで哀愁漂うビートに甘い歌声が乗っかり、若年層にとってホットなアーティストであることは間違いないです。
ところでレーベルは10kだったんですね。Trippie Reddとか、Internet MoneyとかHiphopのハイブリットを行くアーティストが沢山揃ってるナウいレーベルです。


Brutal Youth / Rebuilding Year
Country: Ontario, CN
Label: Stomp Records
このバンドは10年以上前からいるバンドなんだけれど、もはや全く見向きもされなくなったLifetime/Gorilla Biscuits/Kid Dynamiteの系譜であるサウンドを変わらないスタンスで続けているのマジで感動ものですね。
そしてやっぱりかっこいいのよ!今までいろんなリバイバルムーブメントが音楽シーンでは起こっていたわけだけど、どうにもMelodic Hardcoreだけは盛り上がりに欠けていました。本当に新しいバンドが出てこなくて、情報のアップデートが止まってしまっているような状態。
昨年のNo TriggerのEP、そしてBrutal Youthの今作くらいじゃないかな。このまま行くと、この手のジャンルの文脈が途絶えそうなくらいHxCシーンでも絶滅危惧種なんだよね。
Turnstileとかが見せたキャッチーさとはまたベクトルが違うので、彼らがその血を継承しているとはちょっと言い難いし。
このギリギリなシーンの中で貴重な存在でもあるし、ジャンルとしてもマジでかっこいいから存続していってほしいなぁ。何よりみんな聴いてくれ。


Scenario / When All Said And Done
Country: Ohio, US
Label: Zegma Beach Records
激情Skramzバンドの中でもちょっとメタリックなリフが印象に残ります。
00年代のScreamoに追随するような側面もあるし、Orchid由来のショートチューン/カオティックな展開もあるので新旧Screamoどちらの層にも刺さるかもしれない。
しかしまたこれも検索しにくいバンドだな・・・


ちゃんみな / NAKED
Country: Tokyo, JP
Label: Warner Music Japan
生まれは韓国で日本語、韓国語、英語の3か国語を話すトリリンガル。すごい。
"TOKYO 4AM"って曲がめちゃくちゃ刺さったから、このアルバムが出る前に「ハレンチ」を聴きました。良くも悪くもJpop色が強すぎて、想像していたちゃんみなとは違うものだったかなぁ。
今作はUS Hiphopの流れを汲んだトラックとかもあって、全体的にトレンディな仕上がりになっています。特に上で貼った曲なんかは、昨今のHiphop meets Pop Punkを体現しているような曲だし、Avril LavigneとかKrystal Mayersなんかを思い出すearly 00'sなアレンジ。
この辺りは完全にUSの現行ラップシーンの影響だなって感じます。
余談ですが、"TOKYO 2AM"っていうシリーズもののAVがあって良いです。えっ。


Single Mothers / Roy
Country: Ontario, CN
Label: Dine Alone Records
Post-Hardcoreにも色々な形があるんだけれど、Single Mothersに関してはDC由来というよりももっとモダンなところから影響を受けてそうなんだよな。
2年連続でフルアルバムをリリースする制作意欲の高さよ。
なんやかんやで10年を超えて活動してるんだからすげえ。


Mat Kerekes / You Look Like A Stranger
Country: Michigan, US
Label: Wax Bodega
昨年リリースしたアルバムではTurnstileのDaniel FangがDr.として参加していました。
今作はMatのソロというよりもCitizenのカラーに近いかもしれない。
ところでMatって前腕めっちゃ太いよなぁって前々から思ってたんですが、めちゃくちゃしっかり鍛えてる人なのね。増量期のフィジーカーみたいな体型しててびびった。
過去にAudiotreeの動画で健康とフィットネスについて語っていました。


Labrinth / Ends & Begins
Country: London, UK
Label: Columbia Records
自身でトラックを作り歌も乗せることができるマルチタレント。
ソロでも活動していますが、DiploやSiaとともに結成したLSDというグループも有名な気がします。
Euphoriaという海外ドラマの曲に採用されたり、何気に注目度は高めです。
ElectroでありながらR&BやJazzといったブラックカルチャー由来のジャンルを上手く消化しているのが彼の評価ポイント。


Bebe Rexha / Bebe
Country: New York, US
Label: Warner Records
ほぼセルフタイトルな今作はPopsからは少し遠のき、70's Discoに立ち返った仕上がりです。客演にはDavid GhettaとかSnoop Doggも参加しており、相変わらずHiphopとかEDMとの相性も抜群。
そんな中アルバムラストに収録されている"Seasons"という曲が素晴らしくて、カントリーシンガーの大御所Dolly Partonがゲストで参加しています。
アコースティック1本で奏でられる涙腺直撃メロディに二人のパワフルな声が折り重なって、ミニマムなのにスケール大の楽曲へと変貌を遂げています。
しかしDolly Partonもうお婆ちゃんなのに、Bebeに全く引けを取らない声量・安定感ハンパねえっす・・・


Jack Harlow / Jackman.
Country: Kentucky, US
Label: Atlantic Records
昨年もアルバムをリリースしていましたがわずか1年で最新作をドロップ。
前作ではクールなトラックが多く、少ない音色の中でJack Harlowのスキルを存分に発揮するという作風でした。
今作は曲のアレンジの幅が増えており、キャッチ―でありノリと掴みが良いトラックが揃っています。
貼った曲はアルバムの2曲目、The Gameの"Wouldn't Get Far"みたいな感じで好き。


Moshimoshi / Green
Country: Helsinki, FI
Label: All That Plazz
2021年の年末記事で詳細がわかんないバンドとして紹介した気がする。フィンランドのバンドでした。
Merchant ShipsやApe Up!のような2010年代初頭のCount Your Lucky Stars、Topshelf Recordsを感じさせるサウンド。なんかエモいより懐かしいという気持ちになってしまう。
今2023年ですよ。2011年、2012年が10年前ですからね。
今高校生の子らは、僕らがやれTitle FightだAlgernon Cadwalladerだの言っていた時にはまだ小学校低学年。
当時から嗅覚が鋭ければ小学校2年生がAlgernon Cadwalladerを聴いていた なんてこともありそうだけど、そんなこと1%以下の確立くらいの話だよね。
なんか久しぶりに若い子にこのブログ見てディグってほしいなと思いました。
途中ほぼ更新しない時期あったけど、一応10年分のアーカイブはあるので。
俺がAmerican FootballとかQuicksandとか全く世代じゃないバンドを聴いて、「昔のバンドかっけえ!最高!」ってなった時と同じ経験をしてほしいですね。
AIやアルゴリズムには無い温もりがある。

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